お金をかけずに魅力あるサイトに変えるテクニックを伝授する連載7回目。前回は、初めてのユーザにわかりやすいウェブサイトにするポイントについてお話しました。今回はスムーズに運営するためのルールづくりについてです。
やる気が無くなる時
サイト運営の中でいつもも頭を悩ませるのは、出来上がったデザインや制作したページが要修正で何度も戻ってくることだ。戻される理由は「イメージと違う」「必要な情報が足りない」など様々。「初めに言ってくれればいいのに」とため息をつきたくなることも多い。
クオリティを上げるための修正ならともかく、単純な手戻りの頻発はスケジュールを圧迫し、スタッフの士気を下げることになりかねない。不必要な修正を防ぎ、限られた時間と人手で最大の成果を出すために押さえるべきポイントは次の3つだ。
1.ルールを作る
サイト運営上のルール作りと言うと、デザインガイドラインや用語集を策定することだと考えられている。しかし最も重要なのは、進捗管理ができる「タスクリスト」を整備することである。
まず、作業ボリュームが一目で把握できるように、作業工程をリスト化しよう。例えば、「1.原稿作成、2.デザイン、3.サーバアップ」の3工程に分かれるとする。次に、各工程を「準備、作業、確認」の3つに分割する。「1-1.原稿作成・準備、1-2.原稿作成・作業、1-3.原稿作成・確認、…」のように分かれて、全部で9工程となる。
作業をスタートする時には、それぞれの作業を誰がやるのか決める。その後は、リストから終わった作業を一項目ずつ消していく。どこまで終わっているか進捗が一目で分かれば、大きな遅れや作業の漏れを防ぐことができる。
様々な作業が並行して進む現場では、常にスケジュールが押してしまう。公開間際に時間がなくなって、必要な作業や確認を省いてしまうことが、手戻りが増える一番の原因になる。
2.ルールを共有する
ルールは作っただけでは意味がない。社内各部署から社外の制作会社まで、関係するメンバー全員がルールを共有することが肝心だ。「ルールの共有化」と言うと理想論のようだが決してそうではない。要は「ルールを知らなかった」と言わせない仕組みをつくれば良いのだ。
まず誰でも参照できるように、スケジュールやデザインガイドラインをPDF化してサーバ上の特定のディレクトリにまとめて公開する。変更の度に必ず更新
日時と変更点を明記することも忘れずに。
それでもルールを守らないメンバーには、根気良く何度でもサーバー上のファイルの在り処を教えてあげよう。そのうちに誰も「知らなかったからルール守れなかった」とは恥ずかしくて言えなくなるはずだ。
3.ルールを守る
スケジュールが滞る原因は、デザインや制作作業よりも関係者の確認・承認過程にある場合が多い。多くの人がかかわるプロジェクトでは関係者の確認を取るだけでかなりの時間が掛かってしまう。しかし確認を怠れば、公開直後に問題を指摘されて、あたふたと修正作業に追われることになりかねない。
スケジュールを守るために「今、誰がボールを持っているのか」を常に明確にしよう。まずは確認が必要な関係者をリストアップし、メールではなくページのプリントアウトに「確認印」の欄を設けて回覧する。「印」の有無でチェック漏れの責任が明確になる。
責任をハッキリさせるのは個人を責めるためではない。1人1人が真剣さを持ち、スケジュールが遅れないように、事前の調整を可能にするためである。
ゆっくりと浸透させる
ルールが機能するためには、例外を作らない公平さとメンバー全員の理解が不可欠だ。そのためにもデジタルデータにこだわらず、一目で分かる手に取れるものの方が、誰でもすばやく、誤解なく理解できる。
「ルールを守る」というと、「融通が利かない、面倒なもの」と思われがちだ。ギリギリのスケジュールの中、トラブルやアクシデントが頻発する現場で、ルールを徹底するのは難しい。その上すぐには結果がでないから、なし崩し的に守られなくなることが多い。しかしルールを地道に守ることで、少しづつ着実にトラブルが減り、あなたの作業がスムーズに進むようになる。
効率的な運用ルールの下、スムーズにスケジュールが進めば、限られた時間の中でもスタッフの能力を最大限生かすことができる。ルールを守れば、誰もが楽になるのだ。