陥りやすい間違い

お金をかけずに魅力あるサイトに変えるテクニックを伝授する連載13回目。前回は、デザインを始める前のコンセプト作りが大切だとお話しました。今回は、コンセプトをクライアントと共有する上でのポイントについてです。

ビジネスでサイトを作る以上、なんとなくカッコいいから、自分が好きだからでは説得力がない。クリエイティブコンセプトを作成して、それに基づいて、デザインに落とし込んでくことが重要だ。ゆえに、コンセプトに間違いがあれば、すべての作業が無駄になってしまう。コンセプトを作成する上で、陥りやすい間違いについて、解説してみたい。

コンセプトなんて役に立たない

実際にやってみれば、コンセプトなんて難しいことではないから、すぐにまとめられることだろう。しかし、「コンセプトを決めたくらいで、どうしてうまくいくのか」「抽象的な言葉をいくら並べてみても仕方がない」「実際にやってみたけど、あまり変わらなかった」という声も聞こえてくる。

コンセプトが役に立たないと切り捨ててしまう前に、作成したコンセプトをもう一度注意深く見直してみてほしい。コンセプトの中でも、1の「サイトの目的」や、2の「サイトのゴール」は、わかりやすく間違うことは少ない。間違いやすいのは、3の「ユーザ像」および、4の「オーナー像」である。これをデザイナーとクライアントの間でしっかり共有することが、良いサイト作りの第一歩である。

自分たちに都合のよい「ユーザ像」

「ユーザ像」をイメージする上で陥りやすい間違いとは、ユーザを「性別・世代別の切り口で捉える」ことだ。

ユーザ像と言えば30代サラリーマン・20代OLのように、性別、年齢、職業等の切り口で括られることが多い。もちろんユーザを分類する切り口としては間違っていないが、魅力的なデザインを考える上でこの分類はほとんど役に立たない。

ネットのユーザは同じ性別、世代でも、各々の興味のあるテーマ/ジャンルで細分化されている。ユーザはクライアントの持つ情報や商品に興味があるのであって、ある世代が集まるとしても結果にすぎない。先ず性別、世代別ありきでサイトのユーザ像を想定すると、得てして総花的なデザインに陥りやすい。

イメージとして近いのは専門雑誌の読者像である。釣情報誌の読者は釣を趣味とする人であって、30代サラリーマンが多いのはあくまでも結果にすぎない。また健康に関心がある読者でも「ターザン」「日系ヘルス」「今日の健康」のどれを読むかは、それぞれのライフスタイルによって異なるはずだ。

ユーザ像を限定することに不安を抱くクライアントも多いが、絞り込みこんではじめて魅力的なデザインを生みだすことができるのだ。これから作ろうとするサイトが、既存のどのな雑誌の読者に近いかを議論してみるのは、イメージの共有に有効である。

自分たちだけが理解する「オーナー像」

「オーナー像」をイメージする上で陥りやすい間違いとは、「業種・業態といった既存の枠組みで捉える」ことだ。

オーナー像として示されるのは、業種・業態、売り上げ、競合他社と比較した業界順位、製品・サービスのシェアなどである。例えば、小売りで、業界2位などという具合である。それは、社内や、業界といった枠組みからみた姿であって、実際のユーザからは知る由もない情報である。ここで考えなければならないのは、「ユーザからどう見えるか」である。

健康食品メーカーを例にとってみると、クライアントは、健康食品を売っている会社だと答えるかもしれない。しかし、ユーザは、痩せること、元気になることを買っていると考える方が自然ではないだろうか。それは、スポーツジムやドラッグストアがライバルになることを意味する。

自分達が思い描いているのと、全く違う理由でユーザに選ばれているのかもしれない。どんな時、どんな理由で、選ばれるのか、また、ネット上にはリアルの競合企業だけではなく、他の業種・業態にも、ライバルがいるかもしれない。

これをはっきりさせるためには、アンケート調査が必要になる。ただし、大掛かりな調査を実施しなくても、直接エンドユーザとやりとりしている代理店担当者や、実際に購入したことがある人に、一人でもインタビューしてみると良い。新しい発見があるに違いない。

徹底的な議論と意識共有が必要

このように「ユーザ像」「オーナー像」を自分たちに都合よく仕立て上げてしまうことの問題は何か。当たり前だが、5の「伝える情報」、6の「表現手法」、7の「サイトのイメージ」で大きく方向性を誤ってしまうことだ。

コンセプトをまとめたら、クライアントからは「早く絵で見せてくれ」と急かされてしまうだろう。その前に、デザイナ-とクライアントで、もう一度「検証」してみることが大事だ。ここをいいかげんにしたまま、画面をデザインにとりかかると必ず失敗する。両者が十分に納得できるように、徹底的に掘り下げて議論するべきだ。

次回は、コンセプトの 5.伝える情報、6.表現手法、7.サイトのイメージ、からクリエイティブを制作する際のポイントを説明していきたい。

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