ふさわしいデザイン

お金をかけずに魅力あるサイトに変えるテクニックを伝授する連載15回目。前回は、情報が的確に伝わるサイト作りのポイントについてお話ししました。今回のテーマは、企業Webサイトにおける「いいデザインとは何か」です。

最初に結論から言ってしまうと、サイトにおける「いいデザイン」とは「ふさわしいデザイン」のことである。先端的でセンスいいデザインが必ずしもそのサイトにとってのいいデザインではない。ふさわしいデザインは、アクセスするユーザに好印象を与え、サイトを使いやすくするものである。いわば自分にとって似合う服のようなものだ。

何だかんだと言っても、人は見た目の印象で判断する。紺色のスーツを着ていれば少なくとも働くビジネスマンに見えるし、遊びに行くなら明るいカジュアルな服装をするだろう。人によって似合う服装は異なるから、選ぶ形や色などのディテールは、その人のセンスが試される。サイトのデザインもそれと同じことが言える。

似合う服が個人の好みやTPOによって多種多様であるように、デザインについても十人十色で意見が異なる。実際、仕事の中でデザインが揉めることは最も多い。担当者と長い時間議論して作り上げたものが、上司の意見一つでひっくり返るのは日常茶飯事。毎回のようにデザイナーは、タイトなスケジュールと修正作業の板挟みで泣かされることになる。

なんで勝手なことを言うのか

デザイナーとして、自信を持って一押しした案が採用されない。しかも複数の案を見せても、納得しない。出来上がったデザインに対して、ああでもない、こうでもないと、いろんな人が違った意見を言ってくる。

「なぜバックの色は赤なの?青じゃだめなの?」
「ここのボタンは押しにくくない?」
「この文字は小さすぎない?」

こんな、曖昧な意見を出来るだけ反映しつつ、何度も何度も修正を重ねていくと最初に意図したバランスが崩れてしまう。とにかく早く終わらせたい一心で、直せば直すほど納得のいかないデザインになってしまう。どうすれば、無駄なやりなおしを避けて、もっとスムーズにデザインを決定することができるのか。

デザインを言葉で伝える

まず第一に、きちんと「疑問に答える」ことである。クライアントは良し悪しを論じる前に、純粋に確認したいのである。それには理屈の通った説明が必要だ。クリエイティブは理屈じゃないという向きもあろうが、ビジネスにおいて制作を請け負うからには、やはり理屈が通ってなければならない。先の意見に対しては、次のような答えだ。

「赤は、御社の企業カラーだから」
「全体に共通するルールを作って統一しているから勘違いされることはない」
「訴求する内容の優先順位から考えるとこの大きさが適切」

デザインしたパーツのひとつひとつに対して、明確に説明ができなければならない。判断基準は先に決めたサイトのコンセプトに合致しているかどうかだ。クライアントにデザインの意図を正確に理解させることが重要なのである。

目的に合っているか見直す

次に、それに対するクライアントの反応によって何を問題にしているのか判断する。再度こんな反論を受けることがある。

「新しい事業としてスタートするため、会社のイメージから離れたい」
「ここは特に重要だから、ルールを多少変えても目立つようにしたい」
「優先順位付けが間違っている。一番大きい文字が適切」

これは、相手の考える目的に合っていないという議論である。譲れる部分ならば要望をかなえてあげればいい。誤解されているなら、丹念に説明を繰り返すべきだ。もっとヒドイのは、

「もっとこう、カッコよくならないの」

こんな反応があったとしても、デザイナーに対するデザインセンスのことではないと考えたほうがいい。クライアントは、あなたのセンスを疑っているというよりも他に言葉が見つからないだけだ。

単に服の柄が嫌なのか、もっとビジネスライクに見せたいということなのか、少ない言葉から見極めなければならない。柄が嫌なら変えればいいし、カジュアルすぎるのなら、もっと堅い見た目にすればよい。

投げやりにならない

ここまで話してきたことは、仕事をしているデザイナーにとっては、至極あたりまえのことで、「いまさら言われるまでもない。」のかもしれない。

しかし、自分が丹精こめて作ったものに対して、クライアントからいくつもの指摘を受けると、どうしても不安になってくる。納期も迫ってくれば正直ついつい投げやりになってくる。整合性がとれないにもかかわらず言うことを聞いていれば、文句もないだろうと言い訳して進めてしまう。身に覚えがないだろうか。

デザインの意見が合わないのは、相手のセンスが足りないのではない。ほとんどの場合、コミュニケーションが不足しているのである。確かに、すべてのクライアントに対して、十分な時間を割くことは出来ないのかもしれない。けれど素晴らしいデザインは、クライアントとの信頼関係が創り出すものである。

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