背後関係をつかむ

お金をかけずに魅力あるサイトに変えるテクニックを伝授する連載16回目。前回は、デザインの意味を言葉で伝えるポイントについてお話ししました。今回のテーマは、クライアントのきまぐれな言動を読み解くポイントです。

仕事がうまく行かない時に、デザイナーから決まって聞かれるのはクライアントに対する嘆きの声だ。「デザインを知らないから、提案を受け入れてもらえない」「仕事の手順をよく知らないから、公開間際に無理な修正がある」「抽象的な説明ばかりで何をしたいのかよくわからない」「見積を出すとすぐ値切ろうとする」…。どれも一面的には真実なのかもしれないが、そこに欠けているのは、相手を冷静に見る視点だ。

別の仕事で頭が一杯

デザイナーは自ら望んでその仕事に就いている場合が多いけれど、企業のウェブマスターのほとんどは望んでなったのではない。部署の異動でたまたまウェブの仕事をまかされただけだ。また、今後ずっとその仕事を続けていくとは限らない。何年かしたらまた別の仕事を担当することになるだろう。

ウェブマスターは専門的な教育を受けてはいないし、前例のない仕事だから、習うべき前任者もいない。経験が少なければ、どんな風に仕事をしたらいいのか、またいつ何をすればスムーズに進むのかわからない。

ウェブサイトを運営管理する専門組織を持つ大企業もあるが、多くの企業では、まだまだ一人のウェブマスターが他の仕事と兼任しながら運営している。そのため、与えられている別の仕事が忙しい時には、ウェブの仕事に十分時間をとれないことになる。それは、スケジュールの遅延に直結する。

ウェブマスターはウェブの仕事を担当しているにもかかわらず、専門家でも専任者でもないことの方が多いのである。

周りの人を無視できない

企業という組織の中では、周りの人との関係が重用視される。当然、ウェブも例外ではない。関係するすべての人に納得してもらわなければスムーズに進まない。ウェブマスターは上司や他部署の意見を無視することができない。

デザインを見せると、決まって好き勝手なことを言ってくる。デザイナーとウェブマスターが話し合ってき経緯をほとんど知らないし、意見に責任を持つこともないからだ。そうして矛盾する修正指示や、制作行程を無視した要件変更が発生する。

ウェブに使用する写真や文章などの素材一つでも、担当者自身で判断できないことがある。そんな時は、他部署の人に頼まなければならない。しかし、事前に準備していなければ、スムーズにやりとりができない。これが、原稿手配やデザインの確認がスムーズにいかない原因となる。

ウェブマスターに必ずしも決定権があるわけではない。ほとんどは社内関係者を調整する役割である。

背後関係への理解が必要

いい仕事はクライアントのウェブマスター次第というのはデザイナーに共通した意見だ。現実には、そんな理想的な相手に巡り会うことは滅多にない。しかし冒頭のデザイナーが言うように「理解がない」というのは誤解であり、実際には関係者をうまくをまとめて「決められない」だけなのだ。

デザイナーが仕事を「いい仕事」をするためには、依頼された案件を制作することだけでなく、ウェブマスターの社内での立場や背後関係を理解し常に把握すべきだ。その上で、どうすればうまく社内の承認を得られるかをウェブマスターと共に考えていかなければならないのである。

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