コミュニティの評価が購入の決め手になる

インターネットの浸透によって、企業と顧客の関係が大きく変化しています。企業がこれまで行なってきたようなコミュニケーションでは顧客にメッセージが伝わらなくなっています。顧客とのコミュニケーションを円滑にするためには、今までのやり方を見直す必要があるのです。

顧客が接する情報量の変化

これまで企業と顧客の最初の接点は電話による営業マンへの問い合わせや店舗の来店など、リアルの接触が担ってきました。顧客が多くの情報を集めるには手間と時間がかかっていました。その為、顧客は限られた情報から購入意思決定を行うほかありませんでした。その状況はインターネットの登場によって一変します。
やや古い資料になりますが、総務省の調査によると国内の情報流通量は2003年から2011年の8年間で71倍になっています。インターネットによって顧客にもたらされる情報量は飛躍的に増加しました。
しかし、その間に情報を受け取る顧客側の情報消費量は2倍程度にとどまります。情報流通量の増加に比べて処理能力が大きく向上したとは言えません。要するに現在流通している情報の大部分はスルーされているのです。企業側は情報が届かないから発信する量を増やす。すると、顧客にはさらに届かなくなってしまう。という悪循環に陥っているのです。
顧客側から見ても、情報量が多いことは、プラスの面ばかりではありません。検索結果に表示される、膨大な情報の中から、自分に必要な情報、好ましい情報を選び出そうとしても、迷ったり、たどり着けないというミスマッチが起こるのです。このミスマッチを埋めるのが、コミュニティ(SNS)の役割になっているのです。

コミュニティの評価が顧客の購入判断を左右する

検索エンジンを使って自分の力で必要な情報を得るのは、一定の技術と根気が必要です。そこでユーザーは自分自身で判断するのではなく「仲間が支持するかどうか」を判断基準として採用したのです。顧客は検索エンジンから得られた情報からの有効な情報を選びだす手段として、ブログの評価や口コミサイトの人気ランキングを活用しています。顧客はコミュニティの力を借りることで、インターネットから自分にとって最適な情報を手っ取り早く選び出すことが可能になりました。
顧客にとって、今やインターネットがスタート(ニーズの顕在化)でありゴール(意思決定)となっています。周囲の仲間が話題にすることでニーズを自覚します。そこで検索エンジンやメディアなどで情報を収集し、候補となる商品やサービスを選定します。さらに口コミや仲間の意見を参考にして比較検討することで、どれが自分にとって最適なのか判断します。
企業や店舗に問い合わせなくても意思決定に必要な情報はすべてインターネットで得られてしまいます。そのため、リアルの窓口にコンタクトするタイミングでは、顧客の購入意思は固まっているのです。このような顧客の購買行動の変化によって、顧客と企業が直接コミュニケーションする機会が減っているのです。

コミュニティが顧客と企業の立場を逆転させる

顧客は企業ではなく仲間とのコミュニケーションに多くの時間を割くことを選択しています。その結果、多くの人が情報交換を行うコミュニティはメディアとしての機能を持つようになりました。顧客はインターネットでつながった仲間と連携することで商品やサービスを評価し、企業も評価できる力を得たのです。
インターネット以前の顧客コミュニケーションでは、企業による意図的な情報の取捨選択が可能でした。何を伝えて何を伝えないかは企業側が決めることができました。しかし、インターネットが浸透した現在では、企業が隠しても全ては隠し切れず、コミュニティの力によってオープンになってしまいます。情報を取捨選択する権利は顧客側が持っているのです。インターネット前後で企業と顧客の立場が逆転したのです。
これまでの企業ブランドが、企業(リアルの店舗やマスメディア)主導でつくられてきたものだとしたら、これからの企業ブランドは顧客(コミュニティ)主導で作られます。顧客は企業やメディアがお勧めする商品やサービスを選ぶのではなく、自分(と周囲)が好感を持っている企業からサービスを選ぶのです。企業は、このような顧客との関係変化に対応した、顧客コミュニケーションを行なっていかなければなりません。

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